わたしがここ老松西天満でお花屋を始めるまでのほんとうの物語です。
少し長いですが、最後までお読みいただけると嬉しいです。
はじめまして。フラワーデザイナーの伊藤陽子です。
大阪市北区西天満で お花屋グリンデル を営んでおります。
お店の周辺は裁判所や法務局があり法律関係の事務所などが多いです。
老松通りには昔からの古美術店が軒を連ね、最近ではグルメな方々に人気の飲食店も増えてきています。西天満は落ち着いた大人の街といった雰囲気です。
わたしは短大を卒業後、企業に入社しましたが、運悪くリストラの憂き目に遭い、会社都合で退職。ちょうど結婚直後のタイミングでもありましたし、リストラで少なからず傷ついてもいましたので、企業へ再就職を目指すのはもうやめて、そのころ習っていたお花で少しのんびりアルバイトでもしようとお花屋さんの門を叩いたのがお花業界への第一歩でした。
門を叩いたのは良いのですが、お花屋経験が無いとなかなか雇ってくれるお店はありません。何軒も何軒も面接に行ってやっと雇って下さったお店は、スーパーの売り場へお花を卸していましたので、仏花や榊などをラッピングし、納品や配達などが主な業務でした。
わたしはお花屋さんが普通免許必須の力仕事だということをそこで初めて知りました。
スタッフが多く、忙しい時は大変な中でも楽しく仕事をしていましたが、ある時少し歳上の先輩から、お花屋さんには「フラワーデザイン」という分野があるということを教えてもらいます。
なるほど花雑誌のページをめくると、フラワーデザインを教える花教室がたくさん掲載されています。
自宅の近くにも教室とショップを併設されている花教室がありましたので、興味が湧いて教室見学に行きたくなりました。しかし、結婚して間もなく仕事はアルバイトなのでお花を習うような余裕がありませんでした。
それでもせめて見学だけでもと伺ってみたのですが、色々お話しを伺って見学させていただいているうちにそこでどうしても働きたくなり、ダメ元でスタッフの募集はありませんかと聞いてみました。
その時は特に募集はされていなく、またこちらも別のお店で勤めていましたのですぐにということでもなく、空きが出たら教えてくださいとお願いしました。
そういう風にお願いして、本当にご連絡いただけるかどうかは分からなかったのですが、有難いことに数ヶ月後にご連絡をいただきまして、それまでアルバイトしていたお店を円満に退職し、念願のフラワーデザインのお店で働くことになりました。
そこからは、フラワーデザインコンテストで常連のレベルの高い先輩デザイナーの方々の中、何も知らないわたしがポツンと入り込んで、時に教わり、時に盗み(そのむかし、技術とは盗むものでした・笑)
フラワーデザインの教室では資格も取得し、年に1度の教室の作品展に夜遅くまで作品を作り込んだり、コンテストでも賞をいただいたり、また海外のフラワーデザイナーの先生をお招きしてのレッスンや交換留学などもされていたので、日本にいながらも大変刺激になり、たくさん吸収して楽しく学び、時にはスタッフ皆で夜遅くまで飲み話し、遊び、今思えば若い頃にとても有意義な数年間を過ごすことができたと思います。
そこからお花に付加価値が付けられないかと考え、心理学がテーマの花教室で学びます。教室併設の癒しのお花屋さんでスタッフとして働きました。
フラワーギフトでお渡しなる方の雰囲気をお伺いしてからお作りすることがありますが、出来上がりをご覧になりぴったりですと仰っていただくことが多いのは、心理学のお花屋さんでの経験が生きているのかもしれません。
また、ミナミの飲み屋さんが多いエリアのお花屋さんでも働きました。
他にいくつも店舗出店されていましたが、ミナミが1番忙しいお店で売り上げも凄かったです。
お花屋さんはエリア、やり方によって全然違うのだなと本当に良い経験になりました。(ただ、今はもうそのお店はありません。)そうして、お花屋さんでのアルバイトも10年が経った頃、気がつけば周りは若い方ばかりになってきましたので、自分はそろそろ独立した方が良いように思い、治安の良い西天満という場所で、ここだとピンときた物件にも巡り会いましたので、自然な成り行きでお花屋グリンデルを開店したように思います。
独立について特に大きな野望があったわけでもなく、ただ自分の大好きなお花を皆さんに提供して、いまの美しい花々を知っていただいて癒しのひとときを味わって欲しい、自分もたくさんのお花に癒されたい笑。この仕事にはひとの一生の数え切れないハッピーな場面、感謝の気持ち、時には悲しみに寄り添う思いやり、植物と向き合うまごころが詰まっていると実感しておりますので、そんな素敵な花仕事をずっと続けてゆきたいという気持ちが大きかったです。
そしてこの文章を書いている今は、開店から16年経ちました。
16年の間に、他の小売り業界もそうだと思いますが、お花の業界もずいぶん変わったように思います。消費者はスマートフォンを片手に様々なサービスや情報を得て、便利に買い物もできるようになりました。最近ではコロナ禍を経て、お花の生産量や仕入にも変化が起こり、お花の需要が高まる時期には価格の高騰だけでなく品薄も心配になります。年々ひどくなる夏の高温は農産物であるお花にも影響が出ないはずはありません。
海外から輸入されるお花も増え個性的なフォルムの珍しいお花もありますが、国産のお花は当たり前に鮮度が良く季節感もあり、優れた生産者さんのいいお花がたくさんあります。国産のお花の生産と需要がもっとうまくかみ合うことができるようになり、お花の流通も、お花がどこかで留まり鮮度や価格が落ちることのないよう、切に願うばかりです。これからもわたしがセレクトした美しい国産のお花を中心に花材を集め、
お客様の心を伝えるフラワーギフトを丁寧にお作りし提供してゆきたいと考えています。
オンラインショップでは、一週間程度前もってご注文くださいと書いてある商品が目立ちますが、
素敵なフラワーギフトとなりますよう厳選花材を集めますので、
何卒ご理解いいただけますと幸いです。
あなたの大切な方へのフラワーギフトをどうかお任せください。
ご注文をお待ちしております!
フラワーデザイナー伊藤陽子より